2018年 07月 08日
山梨県立博物館(甲府市)では7月16日まで古代アンデス文明展が開かれています。 中南米の高度な文明にはかねてから興味があったので、往復100kmの車旅をしてきました。 館の前庭では南アメリカに生息するアルパカの撮影可とあったので、写真を。 金銀財宝を求める西欧帝国に侵略された歴史から、ついつい貴金属文化のイメージがありましたが、展示を見ると、文明の中心には陶器(ではなく土器だそうですが)があったと知らされました。 どの時代においても、高度な技術によるとみられる彩色土器が展示の中心にありました。 常設展では山梨出土の多数の土器を見たのですが、それはやき色のついた程度の素地土のザラザラした質のものでした。 このつるっとした表面の仕上げは、数百年、千年にわたって保たれて来た、とすると、どのように処理された「土器」なんだろうか?色ははげ落ちず、退色しないでたもたれているのだろうか? 展示された土器の全てが彩色によって人物や生き物(想像上の物も含めて)、文様で埋め尽くされています。しかも鉢や、カップや小型の注器などは断面を見ても相当に薄づくりです。 日本の土器を見慣れた目には、ビックリな展示でした。 帰って早速ネットを検索して、彩色土器の表面の仕上げはどのようになされているか、どうすれば可能かを調べてみました。 実は、この彩色の方法を研究したレポートにぶつかりました。 それによると、彩色後に焼かれた(野焼きでらしい)らしい。 土器にあとから色を塗ったら時を経ずして素地が見えてきそうですもんね。 結論から言うと、その研究者たちが実験したところでは、 成形後の素地土に、磁器土によるスリップ(泥奨(活字としては大で無く水))を塗って、その上から鉄やマンガンなどの色素材料を塗ってから焼くのだそうです。 ここがキモのようなのですが、スリップが乾く前に色材を塗るのだそうです(乾いてからだと色材の剥離がおきる)。 そして850度程度で焼くと、下に塗ったスリップがより白くなって、上に塗った色も鮮やかに出てくるとか。 これって、今陶芸をやっている立場でも活かせそうなところがあるなあと思いました。 アルパカの注器で言うと、アルパカの形の器(当然中は空洞)を作って注ぎ口を接着したあと、(粉引を作る手順で言えば)乾ききる前に白い化粧土(スリップ状の)を塗っておき、ほどなくマンガンと鉄を含む黒の色材を塗って背中と足の一部を表現し、注ぎ口部分には鉄などでできた赤や黄の色材を塗り分ける。 これをよく乾燥させて焼いてできた。 とは言えても、この複雑な形を枝葉を詰んだ野焼きで焼いて傷なし、焦げ目なしにできるってすごくねえ? まあ、そんな風に思える品々でした。 このあとは、赤色のところには透明釉を塗らないようにしないと意図した発色をしません。 磁土なので透明釉を塗らなくても水はもれないのかも。 刺激されるのが心地よい展示見学でした。 それにしても、アルパカでなくても、甲府盆地は暑い(あ、汗が~)。
by sakura-kama
| 2018-07-08 21:27
| 陶芸
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